読書感覚文
主観と感覚のままに書き殴ります。ネタバレは、未読の方が今後読んでも楽しめる範囲で
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星降る夜は社畜を殴れ
星降る夜は社畜を殴れ
第19回スニーカー大賞<特別賞>



(あらすじ)
高校を中退してブラック企業に勤める立花アキトが、残業を強要してくる社畜と戦う。

・おバカコメディってこういうのです!
・ネタのオンパレード
・ここまでふざけきってくれると痛快

入院中の姉のために高校を辞めてブラック企業に就職。
重めのテーマの話かと思いきや……
おバカコメディでした。
流血します。なんか人死んだらしいです。でも、ずっと悪ふざけです。
もちろん褒めています。
定時退社しようとする主人公に対して、係長が無数のコピー用紙を投げ「ペーパー・トルネード」と叫んで攻撃してきたり、平社畜三人が肩を組んで「残業、残業、ざんぎょ三兄弟」と歌い出したり、主任が戦隊ヒーローのコスプレをして「社畜戦隊イエスマン! ただいま参上!」と口上を述べ行く手を阻んだりします。
p.57~
主人公、緊縛麺による攻撃を受ける
→拉麺ならば食べられるはずと思い食べてみる
→美味い!
→敵「うわっ、汚ねっ」「さっき床に転がってただろ。バイキンくっついてるぞ」「3秒ルールを知らないのか。ペッしなさい、ペッ」
→主人公「オレの胃袋は特別製でね。3秒どころか3分は余裕でオッケー」
さらにこの場面、主人公の麺を口に含んだ瞬間の描写が長い。細かい。食レポか!
これだけ狂った展開にしてくれると、もう楽しむしかありません。
ジェットコースターに乗った気分で勢いに任せて読み進めるが吉!

ゴールが不明なのがちょっと難点か。読んでいる最中、「いま何を読まされているのか?」と我に返ってしまうことがしばしばありました。
要は、次に何が起こるのかがわからなすぎるということ。日常は無限に続いているのに、ターニングポイントが見えない。偶然に左右される現実。文化祭とか運動会とか行事がなにもない時期の学校生活という感じ。読者が「展開が読めない」という面白さを味わうためには、予め道筋を示しておく必要がある。「次、こんなことが起こるだろうな」「こうなったらいいな」という期待を読者が抱けないと、いくらその瞬間瞬間のギャグがおもしろくても、通して読んだときの驚きは得られないのです。
クライマックスに関しては、本編中なんども「死ねばいいのに!」というネタを入れておいてからの、一応のオチをつける処置として適切だったと思います。
ラスト5ページは、……ダメじゃない?
新人賞受賞作って帯つけて出している以上は、一冊の本として完結しておくべきでしょう。
「続きを臭わせる」という終わり方は表現の方法のひとつとして否定はしません。しかし、本作は明らかに「次のパラグラフがない」という状態で終わっています。
あと一行でよかったのです。形式だけでもちゃんと一冊の本を締める一行が必要だったと思います。


主観:(-)

オススメ度:B


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異界の軍師の救国奇譚
異界の軍師の救国奇譚
第19回スニーカー大賞<特別賞>



(あらすじ)
家事スキルの高い男子高校生が異世界に転生する。転生先の王宮にて、ポンコツ姫の主催する昼食会を手助けする。

・スカシとしてはある意味成功
・女性キャラがみんな良い奴!
・原題『君とリンゴの木の下で』
・挿絵のラフ感

嫌いじゃないです!
魔法と剣モノと見せかけて……

(ネタバレ警報)

実は主夫モノ!
家事が得意な男子高校生が、魔法の世界で魔法をガン無視して家事のなんたるかを伝道する物語です。
こういうスカシは結構好きなんです。
序盤、牢屋で粗末な食事を出されて切れる主人公。
中盤、夢の中に現れた女神が土足で上がろうとするのを叱る主人公。
終盤、王女にお手製の梅干しを食べさせ反応を楽しむ主人公。
魔法と剣の世界では現代日本の一般知識が珍妙だからと調子を漕ぎまくる主人公。読者も一緒になって楽しみましょうというコンセプトなのでしょう。
タイムスリップものや旅行記モノにあるような、いわゆるカルチャーギャップコメディの一種。

そのカルチャーギャップコメディにのせて、ティアの成長を見守るという物語進行。
自己評価の低いヒロインが異分子の影響を受けて、次第に自尊心を身につけゆく。
テーマの設定がシンプルでわかりやすい!
『笑顔の仮面』に象徴されるのはティアの『姫』という肩書き。ラストシーンp.265の「治外法権」ネタで、かなり上手く落ちたように感じました。

アリーシャの味覚についての謎解きシーンは、最初の牢獄シーンが対になっていてよかったです。彼がそうだったように~というのはかなり納得。

もう一度いいます! 嫌いじゃない!
……ですが、擁護できない部分も多々あるというのが残念なところ。

日本文化を異世界にもってくるシュールさを狙っているのはわかります。
読者を日本人に狙いを絞っているからこその意図だというのもわかります。
ですが!
シシオドシの登場は唐突にもほどがあります。ああいう使い方をするなら、序盤中盤で出しておかないと駄目です。料理や服に関しても、物語で重要な役割を持たせるのであれば、きちんと序盤中盤で布石を置いておかなきゃアウト!
初っぱなのシーンで入れるのが難しければ、要所要所で、主人公が元の世界である日本を回想するシーンを入れれば済む話だったんです。女子にモテたくて身につけたはずのスキルのせいで四苦八苦するおもしろエピソードなんて、この作者さんならいくらでも入れようがあったと思います! 冒頭の裁縫部のエピソードが笑えるだけにもったいない!
物語上新出単語がなんの説明もなくしかも終盤重要な役割を持って登場するのは、一本の作品として駄目!

初っぱな、
現代日本にて、その後一切出てこないクラスメイト達との会話→公園→唐突な爆発→気付くと異世界→騎士に槍で突かれる
というのが第一章始まる前に一気に語られます。
荒唐無稽はいいんです! お馬鹿なノリでもいいんです!
しかし!
せっかくなんの能力も持たない主夫な主人公が魔法と剣の世界に転生した(しかも王国の城内)にもかかわらず、本作ではあっという間に姫の側近さんに受け入れられて庭師という立場に落ち着いてしまうのです。
この「立場が序盤にさっさと落ち着いてしまう」問題のせいで、主人公ダイチくんの「元の世界に帰りたい」という目的が、まったく危機感をもって感じられない。さらに、「これから面白くなりそうだ!」という読者側の期待まで削がれてしまいます。
p.43
「帰りたい、けど死にたくない!」「俺は命の危険が無いと保証された状態で行動を起こしたいと思います!」
主人公の情けない台詞はギャグとして笑えます。作り手の割り切りもわかります。
でも!
だったらその「命の危険が無いと保証された状態」にもかかわらず、「命の危険にさらされる以上の逆境」に陥るというような展開がないと、ギャグのフリだけやってオチのない、やりっぱなしに見えてしまいます。

側近やティアがあっさり異世界人認定しているところも少しひっかかる。
本作では「異世界から飛ばされた。侵入者ではない」と弁明するシーンをカットしています。
口で説明しただけで信頼を得られるほど彼の話術は巧みなのか? それとも異世界からの来訪という事態がそれほど驚くに値しないことなのか?
そんな疑問にくわえ、
p.85「君の身の上を知っている私には」
という側近さん。いやいや、あなた、知ってるんじゃなくて思い込んでいるだけでしょう!?
「~っぽい」という不確定要素だけで異世界人認定してしまうのは護衛としてどうなのか。と、首をひねってしまいます。

p.276
最終パラグラフの締めの行。
『救世主』じゃなくてそこは『軍師』でしょう!?
しまりが悪いと感じました。
『軍師』って単語が独特で出しにくいのはわかるのですが、そこは外連味でなんとかなります!
ここで嘘がつけないようなら『軍師』って単語のチョイスが失敗です!
『救世主』に『オカン』ってルビ振る方がまだマシです!

そもそも、
タイトル『異界の軍師の救国奇譚』の時点で『軍師』に『オカン』ってルビ振っておいた方がよくないですか?


主観:(+)

オススメ度:C


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名探偵×不良×リア充×痴女×決闘者 2 ~偽装対決!?~
名探偵×不良×リア充×痴女×決闘者 2 ~偽装対決!?~



(あらすじ)
部員がそれぞれ割り当てられたキャラクターを校内で演じ続けるという偽装部に、生徒会副会長の闇根が入部を希望してくる。闇根は入部を拒否されマスカレード部を設立。部室をめぐって偽装対決をもちかける。

・ギャグはおもしろい
・キャラクター同士のやりとりは賑やかで楽しい
・今年のワースト候補

新キャラ二人、闇根くんと水瀬さんがよかったです。
闇根くんの扱いのひどさが笑えます。名前を間違われるギャグの天丼。マスカレード部の面々にさえゴミのように扱われる感じ。全校生徒にまで相手にされていないp.263の不憫さは最高。
ギャグはだいたい面白いです。
p.62からの3通のお悩み相談ネタは普通に笑いました。
5章の校長と奥さんのネタのスカシもなかなか。
水瀬さんの「ナノダヨ」ネタはもっと引っ張って欲しかった。せめてp.77、p.78の終わりまでは強引にでも引っ張った方がもっと笑えました。
出てくるだけでページのテンションが上がるキャラを二人も登場させて、豪華だなぁと感じました。

もし3巻が出たら必ず買います。なので、ここから先の辛辣なコメントをお許しください。

はっきり、テーマの描き方を失敗していると思います。
「居場所を守るために闘う」
登場キャラにそういう台詞を何度も吐かせています。
それ、直接的な表現で言わせたら駄目でしょう。
偽装部=居場所=五人の黒歴史を抱えたキャラ達が安らげる場所
言いたいことはわかります。
しかし、当事者であるキャラクター達が「居場所を守る」とかそのまま口に出して言ってしまうと、
「自分の過去と向き合う」「殻を破る」ことから逃避、ぬるくて閉鎖的な空間に閉じこもって仲間同士で甘やかし合うことを肯定して開き直っているように聞こえるのです。

他者否定の閉鎖的な空間という印象を強める原因、
闇根くんの入部拒否の理由を、「生理的に受け付けない」で片付けるのは、いくらなんでも乱暴すぎ。
ギャグとしては面白いのに、最終的に「居場所」というテーマに落とし込む上では、冒頭の闇根くんの仲間はずれネタが致命的になっていると思います。
さらに、主人公サイドが公共財物を破壊してしまい隠蔽のために金策に走るというプロットも不健全。
「実は他に犯人が居ましたー」というオチをつければ一件落着……ってそんなバカな!
6章に至るまで主人公サイドが、
・悪事を隠すために奔走する
・しかもそれはある生徒を入部させないため
・さらにそれを「居場所を守る」美談っぽく描く
ケイパーものでも無い限り、主人公側へ感情移入しにくい。悪い意味での「ひどさ」が際立ってしまい、かなりのノイズになっていると思います。せっかくのギャグシーンも、そのノイズのせいで笑いにくくなってしまっています。
まさか、物語から完全に目を背けてシーンごとのギャグだけを拾い読みするような、本末転倒な読み方を推奨しているわけではないでしょう。もし仮に「テーマなんてあってないようなもの」前提で書かれている作品だと言うのならば、テーマを全体に臭わせすぎですし、テーマが大きく関わるように設定してしまった物語の根幹からして失敗だと言わざるを得ません。

何より問題なのは、この6章までの話が、新キャラの顔出しをするためだけに設けられた、まったく物語の推進力にならない短編集であること。
部分部分はちゃんと面白いのです。
おそらく作者さんは真面目なんだと思います。だからこれをやっちゃったのだと思います。長編で全シーンきっちり濃密にギャグを敷き詰めてキャラ立てに走りすぎると、読者が読んでいる最中「ワンシーンが長い」「話が進まない」という感想を抱きやすいのです。
マスカレード部が出てくるのが7章。
本気で「居場所」というテーマを描きたかったのであれば、7章~10章の展開をもっと練って一つにまとめるべきだったと思います。
6章までに伏線をちりばめているのはわかります。でも、木を森に隠すために森をジャングルにする構成は単純に長くてだれます。

あと、偽装の強制力がなくなったことによって「偽装」そのものの面白さはほとんどなくなってしまいました。
読みようによっては「こいつらなんのためにこんなことやってんの?」と首を傾げるレベル。「居場所だから」という理由付けにはやっぱり限界を感じてしまいます。

総じて、
ワンシーンごとのギャグセンスが光る!
テーマの描き方が残念!
下手に良さげなテーマに落とし込もうとせずに、ぶっ飛んだ設定とコメディに振り切ってしまった方が、みんなが幸せになれると思います。


主観:(+)

オススメ度:C


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名探偵×不良×リア充×痴女×決闘者 ~犯人は誰だ!?~
名探偵×不良×リア充×痴女×決闘者 ~犯人は誰だ!?~
第19回スニーカー大賞<特別賞>



(あらすじ)
 悠人ら五人は『プリン』と名乗る者から脅迫状を受け取る。五人は『プリン』の指示でそれぞれ「名探偵」「不良」「リア充」「痴女」「決闘者」のキャラを演じながら学校生活を送ることを強いられる。悠人らは慣れないキャラ作りに翻弄されながら、『プリン』の正体を暴こうと奔走する。

・ラブコメ部分は星五つ
・転がしがいのある秀逸なアイデア
・衝撃のラスト

良かったポイント。
『なりすましコメディ』というジャンルを全面に押してラブコメにぶっこむ設定、アイデアは非常に面白い。秀逸です。
ハーレムラブコメとして、各ヒロインと主人公との距離の取り方、接近のさせ方のバランスがグッド。
ドタバタ感、パラグラフの締め方(オチの付け方)がしっかりラブコメやってる感じが出ていて安心。
ギャグセンスがツボでした。
p.105の万引き犯の件。
p.118
(ガーン!! という効果音と共に、里奈は積み木をポロリと落とした。)
p.218
「それでもゆーちゃんは健全な男の子なんですか!?」
等。
ヒロインの里奈ちゃんの抜けたセリフがおもしろいです。良い感じのずれ具合がすばらしい!
彼女のダジャレ、作品内では滑っている体ですが、読んでるこちらは爆笑しました。
第八章からのたたみかけは強引で面白かったです。
裏切りの連続は、読んでいて楽しくなりました。

で、がっかりポイント。
キャラの割り当てと、テーマ設定は明らかに練り込み不足だと思います。
まずキャラの割り当てに関して。
せっかくの『なりすましコメディ』を生かし切れていません。
『なりすましコメディ』の何が面白いか。
ポイントはキャラの「本質」と「かりそめ」(偽装)の距離。一人のキャラの中で、「本質のキャラ」と「偽装のキャラ」がズレていればズレているほど面白いのです。
本当の自分とは違うキャラを無理矢理、必死に、一生懸命演じようとするから、端から見ているこっちはおもしろいのです。
p.157~160で、「痴女」を演じる真紀ちゃんが「ちょ、ちょっと恥ずかしいですけど」と言いながら自分のスカートをまくり、悠人君にパンツを見せようとします。
真紀ちゃん、素直すぎです。まじめすぎです。
「痴女」キャラを演じて面白さが生きるのは、自分から迫っておきながら自分が一番赤面してパニックに陥るような「男勝りの初心ながさつ女」か、自分から迫っておきながらエロティックな態度の節々に殺意のオーラを込めて周囲を萎縮させるような「目で人を殺せる冷徹毒舌女」のどちらかではないかと思います。
真紀ちゃんが演じて面白いのは「不良」キャラです。
「不良」キャラの偽装として、口調の変化に一番ギャップが出て面白いのが真紀ちゃんだからです。
で、真紀ちゃんを「不良」に変更した方が、第七章の悠人君の鈍感ネタは生きると思います。
p.227ですよ。
真紀ちゃんがとったとある突飛な行動に対して、
悠人「さっきのって、不良の真似事だったんだろ?」
真紀「……へ?」
悠人「でもあれ、不良の方向性ちょっと間違ってると思うな。確かにああいうのも悪そうなイメージあるけど……。いくら練習とはいえ――ん?」
真紀「ゆーちゃんの馬鹿あああああ!」
ばちんっ!(平手&脱走)
悠人「……あ、練習、続いてたんだ。まじめだなぁ。でも、練習ならもう少し手加減して欲しかったな……痛てて」
みたいに落とす方が、動きがあってかつ悠人君の鈍感さが強調できませんか?
もったいない!
で、本作で「不良」を割り当てられている愛香ちゃん。
口調がぶっきらぼう、かつコミュニケーション苦手(自分の気持ちを正しく他人に伝える能力が低い)、で、ちょっと幼児性あり。
元の愛香ちゃんが「不良」の要素を備えているので『なりすましコメディ』のメリットがかなり薄くなってしまっているのですよ。
ギャルゲの『Kanon』に出てくる「蜂蜜熊さん」がまさにこんなポニテキャラで不良扱いをされていたこともありますし。
また、「不良」キャラを偽装する小細工が口調と竹刀と用語だけというのも弱い気がしました。で、この三つの小細工だけでもちゃんと面白くなりそうなのはやっぱり真紀ちゃんの方なんです。ここのキャストはもう少し練って欲しかったなぁ……。
「リア充」「決闘者」は二人とも素のキャラと偽装キャラが近すぎです。
二人とも素の性格からして、偽装しても違和感がないんですよ。
違和感がないとダメなんですよ! 『なりすましコメディ』は!
里奈ちゃんが「リア充でない理由」を「ダジャレのおもんなさ」だけに託すのはちょっと強引でしょう。
「里奈ちゃんがリア充ではない」ということに説得力がありません。
里奈ちゃんは「リア充」に偽装する以上、実際には「リア充」であってはいけないのです。
致命的なのは、p.142。
里奈ちゃんのモテ描写をやったらダメでしょう。
ラブコメ的には相当面白いシーンですよ。
でも、この作品的には、「リア充」を偽装する里奈ちゃんの面白さが著しく損なわれています。
残念。
惜しいのは「名探偵」の美雪ちゃん。
美雪ちゃんはヒロインズの中では一番無理している感が表現されていて良かったです。
が、努力のシーンを見せすぎですよ。試行錯誤する様子を見せすぎです。
『なりすましコメディ』では「なりすまそうと」苦心するシーンはそんなに面白くないんです。
本人は「なりすましている」つもりなんだけど、全然できてないというシーンが面白いんです。
もっと調子こいだ美雪ちゃんが見たかったです。
テーマ設定に関して。
核心部のネタバレは避けた上で。
美雪ちゃん(名探偵)
愛香ちゃん(不良)
里奈ちゃん(リア充)
真紀ちゃん(痴女)
悠人君(決闘者)
中盤、それぞれの偽装キャラが別のキャラの黒歴史であることが判明します。
つまり、それぞれのキャラは、知らないうちに、自分の黒歴史を隠すために他人の黒歴史を演じていたということ。
自己を否定するのために他者を肯定していたことになります。
読んでいる途中「なるほど!」と思いましたよ。当然物語は、それぞれのキャラが自分の過去をちょっと調子の外れたコミカルなトーンで客観的に見直すことによって、「なーんだ。自分の過去ってそんなに恥ずかしいことじゃなかったんだ」と気づき、自己を見つめ直し、過去を肯定した上で成長していくという展開に向かっていくだろうな、と予想しますよ。
しかし!
結末は予想の斜め横でした。
車道が違うんです。まさかそんなテーマに落ち着かせるとは、予想外でした。
で、実際そういう方向にもっていくからこそ、
それぞれのキャラは自分の黒歴史が他人に演じられているにもかかわらず、反応薄過ぎという点は納得できるのです。
しかし! だとしたら!
最終的に自己否定から自己肯定へというテーマにもっていかないのだとしたら、それぞれのキャラが他キャラの黒歴史を演じる物語上の必要性がまったくないのです。
謎解き要素の一端で済ませるには、重すぎるんです。「え、でも……、この子等、自分の黒歴史を目の当たりにして……、あれ?」と、読んでいる間ノイズとして作用してしまうのです。
それ以上に! それぞれのキャラが自身の黒歴史を見て動揺しないのなら、そもそも冒頭の手紙の強制力が相当弱まって見えるんです。ただでさえ彼らの『弱み』が「ん? そんなのたいしたことなくね?」て程度に見えるのに、さらに「たいしたことなく」見せてどうする!? 「彼らにとってはたいしたことなのだ」ということをもっともっとアピールしてくれないと手紙の強制力への違和感はぬぐい去れません。
本作は、せっかくの『なりすましコメディ』です。
もっとぶっとんだ偽装キャラを設定し提示した方が、登場人物達の慌てふためく様が大きな笑いを生み得るし、「○○力向上」という目的にもマッチしていたのではないでしょうか。
途中放置状態になるある伏線をもっとうまく使えば、ぶっとんだ偽装キャラを提示することなど造作もないことだったと思います。
本作、『なりすましコメディ』としてはそれぞれ演じる偽装キャラが弱く見えるし、テーマは矮小化されて見える。
設定とテーマが互いに互いの魅力を削ぐ残念な出来になっていると思います。
他、不備を上げていけば切りがないので三カ所だけ端的に。
p.110~のギャグは説明不足。p.111(またやっちまった!)という地の文の後にフォローが必要。改稿段階のチェック不足だと思われます。
p.132のセリフ「こういう展開って漫画とかでよくあるでしょう?」は、この世界観で言わせたら、無意味に現実に引き戻されるだけのノイズ。
p.151「りーちゃんは変わらないですね」とp.152「一番変わってないのは、ゆーちゃんかもしれませんね」
この段階では偽装してないとダメなはずの二人がそんなこと言われて、普通に同調するという描写で落ち着かせたのには、読んでいて目を疑いました。p.148で「転校」というワードが出た瞬間に態度豹変させるぐらいの冒険がないと、この小説に「偽装」というルールをもうけた意味がありません。

結論。
ラブコメの断片断片はちゃんと面白いんです。センスが光ります。ただ、一発逆転を狙ったアイデアそのものがあだとなった気がしてなりません。
間違いなく好きな作品ですよ。キャラ同士のアンサンブルはもっと見ていたいと感じましたよ。だからお願いします。アイデアの枠だけ作って安心しないでください。ブラッシュアップしてください。


主観:(+)

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ラグナロク 黒き獣
ラグナロク 黒き獣
第3回角川スニーカー大賞<大賞>



・血がぶしゅーっ!
・展開のたたみかけが見事!
・ページをめくらせる技術の高さに圧巻
・決め台詞いいね!
・これぞエンターテイメント小説

ラノベ作家目指す方は必読です。
アクション好き嫌い関係なく、読んでください。
世界観や人物設定を、いかに展開の中で盛り込んでいくか、どう入れていけば読者に効果的に印象づけられるのか、盗める技術がたっぷりと詰まっています。
リロイ&レナとのやりとりから、依頼、襲撃、捕縛、と序盤に展開をたたみかけて読ませるテクニックが凄いです。
キャラの登場、引き際も見事。
リリィの絡ませ方、最高でした。
へパスの変質具合もよく味が出ています。
p.75のフォローで「武器手放したらどうすんの?」という読者が抱く根本的な疑問に蓋をしておく抜け目なさ。
味のある一文が多いです。
p.167
「俺……格好悪かったな」
「格好良かったことがあるのか、おまえ」
p.189
「本当に残酷なのは、あなたね」
p.179の左足とかはどうでもええわ!
目的をしっかりと明示してくれるので、読んでいる途中に物語を見失う心配がありません。
最後の最後まで読者へサービスを見せてくれる周到さに脱帽でした。
純粋に読者の「好きか」「嫌いか」だけに委ねられる形に、ジャンルエンターテイメントを落とし込む技術は必見です。


主観:(-)
オススメ度:A


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