読書感覚文
主観と感覚のままに書き殴ります。ネタバレは、未読の方が今後読んでも楽しめる範囲で
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ハイスクール・ローレライ 運命のひと耳惚れ
ハイスクール・ローレライ 運命のひと耳惚れ
第16回えんため大賞<優秀賞>



(あらすじ)
 音フェチの田野音好は高校入学式当日、とある美声にひと耳惚れする。その声に惹かれて朗読部に入った彼は、自慢の耳を駆使して、愉快な仲間達とともに、次々と学園に巻き起こるトラブルを解決していく。

・学園コメディジャンルに新しい風を吹かせる名作
・方言っていいよね
・聞き上手

学園コメディって、こういうのですよ!
読み終えて震えるような感動を抱いたのは久しぶりでした。
終始一貫して「音」をテーマにして描かれるコメディです。
エピソードごとに完結していますが、ストーリー四コマ漫画のように、部分的につながりを持たせる工夫があり、また各イベント切り口が多角的なので飽きません。
一見関係なさそうに見えるトラブルが、最終的にはしっかりと「音」によって解決されていく気持ちよさに圧倒されます。
全然帯でも解説文でも触れられていませんが、これ、ライトミステリーです。
ミステリーの最低条件をしっかり満たしている(情報提示と展開の順番が正しくなされている)ので、巷で混同されがちな「ミステリー風」ではなくちゃんとした「ミステリー」です。
正確には、ミステリーとして見ることが可能な作品です。

主人公がイントネーションに敏感→「じゃあ方言は……?」
古山先生に鍵の修理を……→「そんなの、怒られるんじゃね?」
本文で提示される情報に関して、読者が「おや?」と思う瞬間を見越して、しっかりとフォローをいれてくれるので安心して読み進めることができます。抜け目ない!

ギャグセンス本当に光っています。
なんども声に出して笑いました。
一部紹介。
p.184

「質問です。全部“いいえ”で答えてください」
「ホワット? 何かのテストかい? まぁいいだろう。協力しよう」
「あなたは女性ですか?」
「ノー」
「あなたは男性ですか?」
「ノー」
「鼻が長いのはゾウですか?」
「ノー」
「今日は金曜日ですか?」
「ノー」
 これで分かった。川端先輩が嘘をつく時の「ノー」は、若干だが音が低くなる。

化け物か!
このテンポ感ですよ。
セリフの間に地の文を挟まないセンスが相当アタリだと思います。
こんなのが何度も見られたら、そりゃ、ページ目繰るの楽しくなりますわ。

とある女性キャラが方言コンプレックスで、発音を標準アクセントに矯正したいと朗読部に入部します。
そこで主人公が指導係に。
エピソードごとに標準アクセントに近づいている彼女の様子を見せられる読者は、やはり寂しさを感じます。
はい。
本作は、裏切りませんね! さすがです!
ラストの展開は、価値観の押しつけに見えないよう工夫が施された、見事なオチだったと思います。
これなら不快感もありません!
本当に、「聞き上手」な作品だったと思います。
次回作に、全力で期待を寄せて、オススメします!


主観:(+)

オススメ度:A


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愛媛出身者でも「だんだん」が通じる人、いまどきいないんじゃない?
と思った方に、オススメです↓




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ひとつ海のパラスアテナ
ひとつ海のパラスアテナ
第21回電撃小説大賞<大賞>



(あらすじ)
 アフターの時代に生きる少年少女アキは、オウムガエルの船長キーちゃんと共にパラス号で航海をするメッセンジャー。ある日、嵐に巻き込まれ、浮島に漂着する。船を失ったアキを救ったのは、美しい金髪の女性タカ。ふたりは、ひとつ海の上で、絆を深めていく。

・マスコットかわいい
・女同士のホモソーシャル感
・ディテールの人

ディテールをしっかり描写する作家性が、サバイバルを描く上でもの凄く機能しています。
なので、物語全体の構造云々より、ワンシーンごとに着目して読むと一層作品の魅力が伝わるのではないでしょうか。
冒険というテーマに合わせているのでしょう、物語のイベントは必然性よりも偶然性をもとに置かれています。
そのため、良くも悪くも、次の展開が読めません。
少年的なアキ、女性的なタカ、ふたりのやりとりは楽しいです。
巷で言う「百合」に至らない程度の抑制の効いたバランスで描かれています。
アキが拗ねるシーンに魅力を感じた矢先、まさにp.220でタカのセリフで説明されたので、しっかり狙って描かれたのだと思います。
前述「良くも悪くも」の「良くも」の部分でした。
「悪くも」の部分は、上記のアキタカふたりのキャラの魅力がわからないと、大きく動きのある第三章の終わりまで、ストーリーが鈍重に感じられてしまうことでしょう。
他人のブログ記事をまとめて読まされているような気がしてしまうのです。
――今日はこんなことをした。でも、明日は何が起こるか分からない。
これです。
帯では「――ボクは、絶対に生きのびる」「『生きる』ことの原始的な意味を教えてくれる」
と銘打っていますが、
割と切迫感が伝わってこないんですよね……。
――今日は生き延びた。でも、明日は死ぬかもわからない。
という帯から想像されるような危機感はあまり感じられません。
もちろん、海にはいろんな敵がいて、常に彼女らは命の危機にさらされているんだろうな、と想像を膨らませることはできます。
しかし、文章上では敵(らしいもの)が出てくるごとに「新出」単語として提示される形なので、どうしても「常に脅威にさらされている」「数秒後に死ぬかも知れない」というサバイバル感は薄れてしまうのです。
p.75は泣いてしまいました。
まっすぐ「生きる」というテーマを描こうとする意気込みを感じて、感動していました。
それだけに、終盤一部展開には、テーマが冒涜されたような気がして正直生理的嫌悪感を覚えました。
おかげで二読目はp.75ちらっと数行見ただけで涙腺がゆるみ、胸が引き裂かれるような思いがして、いったん本を閉じてしまいました。

アキちゃんのキャラは個人的にすごく好きです。
p.200のドリルにはしゃぐシーンとかステキです。
p.240の絵は、良い意味で卑怯でしょう。初読時は涙腺ゆるみました。
p.306の最期の行は、良い意味でゾクっとしました。
良い小説を読んだなと、思わせてくれるような気の利いた表現は多く挟み込まれています。
とにかくワンカットごとのディテールが魅力です。
陸地のなくなった世界に生きる女の子の日記を読んでみたいという方にオススメいたします。


主観:(-)

オススメ度:B


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陸地のない世界観で女の子同士のちょうど良い乳繰りあいを楽しみたい方にオススメです↓





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ゼロから始める魔法の書Ⅲ ―アクディオスの聖女<下>―
ゼロから始める魔法の書Ⅲ ―アクディオスの聖女<下>―



(あらすじ)
 傭兵は吊り橋から落下し帰らぬ者となった――かに見えたが、神父と共に救出され、ロータス砦に身を置くことになる。ロータス砦を拠点とする盗賊の頭目は獣落ちで、どうやら「聖女」とつながりがあるらしい。彼らの目的は「聖女」の奪取。傭兵、頭目、神父。三者の思惑は錯綜するも、利害は一致している。一時的に共同戦線を張り、彼らはアクディオスへ進出する計画を立てる。

・本気で唸った一冊
・上巻読んで数ヶ月後に読んで問題なし
・ゼロ様お茶目
・ゲロシーンがあると名作の法則

<下巻>なので、第七章からはじまります。
なにがすごいって<上巻>読んで数ヶ月後に読むことを想定して書かれていることに驚きました。
うろ覚えで読んで問題ありません。
むしろ、<上巻>読んで時間をおいて読んだ方がカタルシスが大きいです。
p.208の6行目が衝撃的すぎて、思わず叫びました。
あの一文の説得力よ!
二冊に分けたのはそのためか!
一冊にまとめてしまうと絶対にこの効果は得られません。
虎走先生、すげぇ!
是非とも、<上巻>読み返さずに、うろ覚えのまま読むのがオススメです。

初読時に感じたこと。
ネタバレは全力回避しているつもりです!
ラストの展開について。
よーへー君、ゼロ様の言葉を聞かないという選択もあったのではないか。
で、いったん立ち去ろうとするものの、振り返り、何かを悟ったかのように、本文中で提示される「ある行動」をとる。
としておいて、ゼロ様一言「やはり、○○の○など○○べきではないな」と軽く微笑む。
の方が、p.302の「君が聞きたくないのなら、この話は忘れてくれ」の後に続くセリフが相当説得力を持つのではないかと思いました。

しかし、
上の提案通りにすると、本編中に提示され、最後の最後にもちょろっとゼロ様が口走る「○○術」なるものを完全悪として否定することになります。
もしかすると、虎走先生は、それを避けたかったのかもしれません。
魔術から魔法を体系的に生み出したゼロ様をメインヒロインにすえた本作。
彼女はきっと、魔術の、便利なところ、不便なところ、良いところ、悪いところを、よく知っているのでしょう。
魔術のあるひとつの側面だけを全否定するのは本作の態度としてふさわしくないという判断なのかもしれません。

世界観、テーマ、キャラ含め、読めば読むほど味わい深いです。
文句なしにオススメします。


主観:(+)

オススメ度:A


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周りにいませんか? 他人の言うことをすべて「善意」で解釈して、見たくないものを見ようとしない人。
この文に、ピンときた方にオススメです↓


もちろん上下セットでオススメです↓



一巻もオススメです↓




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アクセル・ワールド ―黒雪姫の帰還―
アクセル・ワールド ―黒雪姫の帰還―
第15回電撃小説大賞<大賞>



・テクニック小説
・ここぞという場所に置かれる台詞が印象的
・引き際の余韻

何が凄いか。
小説は設定だけでは読めない。
世界観だけでは物語にならない。
読者を引き込むためのキャラクターが必要。
ページをめくらせるためのハンガー、危機的展開が必要。
と、この作家先生は、世界系小説の弱点を熟知した上で、技巧的に書かれている節が見られます。
ここぞという場所で置かれる名言なるものは惹かれます。
p.135のハル君のゲーム論。
p.189からのハル君の台詞、嫌な感じが出ていて良いですね。
自己評価の低かった少年が、眉目秀麗完璧超人なお姫様に出会ったことをきっかけに、ゲームを通して、自尊心を取り戻していく物語でした。


主観:(-)

オススメ度:B


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おもしろいゲームに次から次へと手を出したい方にオススメです↓





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ほうかご百物語4
ほうかご百物語4



・もはや身内向け
・真一君とイタチさんの幸せを願って見守る小説
・安心して楽しめる
・バレンタイン回
・だらだら読める安定のラブコメ感

p.96
「思いとか気持ちって、写真よりも絵のほうが伝わるもんだと思ってたけどさ。こうして見ると、写真もいいなあって。思い出がそのまんま、誇張なしで残るところが逆にいいのかな」
「へえ。なんだか真一らしい感想だね」
「そうかな? まあ、イタチさんの写真だからそう思ったってのもあるだろうけど」
「……もう」
このイチャイチャ!
もう完全に身内向け。二人の恋を祝福する人限定のご褒美小説です。
中盤終盤はメリハリをつけるためか、二人の距離が……。
このウジウジシーンが身内限定感をより強めています。
バカップルが互いに相手を思いやりすぎて勝手にそれぞれが悩んで悶々とするシーンって、部外者にとっては拷問ですからね。
そろそろバランス調整が難しくなってくるのではないでしょうか。
p.48のカットが鮮やかだったり、p.68の先輩に対する真一君のフォローが見事だったり、読ませる技術に関しては、安心して楽しむことができます。
p.68の先輩の発言の後、あのフォロー(真一君のセリフ)があるのとないのとでは読者に与える印象がまったく違います。
カラーイラストのイタチさん、ヒロインのくせに左隅で小さくニッコリ笑っているのがとても可愛いです。


主観:(+)

オススメ度:B


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三巻まで読んで、真一君とイタチさんのイチャイチャを応援したくなった方にオススメです↓



一巻~四巻セットでもオススメです↓




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ほうかご百物語3
ほうかご百物語3



・温泉回
・期待を裏切らない
・設定の生かし方が見事
・クライマックスの盛り上がりが<大賞>受賞作
・まよひが!
・最近、小説を一冊書けば体重が一割減ることに気づきました。あと七冊が限界です(嘘)。←!!!!

イタチさんの「良い子」キャラの使い方が見事です。
風呂イベント酔っ払いイベント誤解イベント拉致監禁イベントなど、お約束の楽しいイベントをガンガン盛り込んでくれます。
が、一般的なヒロインキャラと違う反応をしてくれるのが本作の見所。
楽しいだけではありません。
第一章から第二章で、真一君とイタチさんの未来を暗示させる気の利いた作り。
コメディに不安や悲しみを混ぜ込むのがホントお上手!
二人の関係の投影。
読んでいるこっちが、二人の将来について考えさせられます。
ある仕掛けについて、
第四章を読んでいる途中は凄く気になってしまいました。
・第三章で十分布石の機能が果たされいるせいで、逆にp.193が説明過多に見える
・p.187で叙述トリックを使いたかったんだろうけど、それ以上に、p.217「先輩? 何だっけ?」の面白さ減少がもったいない
しかし、第五章読み始めて納得。
その仕掛けを使う上で唐突に感じさせないための配慮だったのでしょう。
第五章が上手いんです。
あの仕掛けを使うメリットは読者への「裏切り」による面白さをより増長させることにあります。
すごく機能していて、直後の真一君の台詞にすごく説得力あります。
彼の意見に激しく同意。
p.258でぞくっとしました。不安になりました。良い意味で裏切られました。カタルシスを感じました。
はい。作者の思惑通りです。脱帽です。
だからこそ、
第四章のアレはわざと下手に見せたのかなという気がして、ちょっと構成上のあざとさを感じてしまいました。
ストレートに第五章で使って問題なかったと思うんですけどね……。
クライマックスシーンは本当に盛り上がりました。
気持ちよかったです。
本作は、
・絵描きの自己実現
・妖怪大百科
という二つの側面がありますが、前者を最大限生かして作ったクライマックスが一巻、後者を最大限生かして作ったクライマックスがこの三巻と言うことができるでしょう。
一巻から三巻までの内容を取捨選択しながら練って練って再構成して90分でまとめたら、『オトナ帝国』とは別路線の傑作アニメ映画が生まれそうな予感がします。


主観:(+)

オススメ度:B


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単体でももちろん面白いですが、一巻から三巻合わせても、オススメです↓







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ほうかご百物語2
ほうかご百物語2



・期待を裏切らないラブコメ感
・新キャラ滝沢さんイイ
・浴衣回&水着回
・ニヤニヤ小説

一巻読んで、真一君イタチさんの関係をもっと見たいと思った人は大当たり間違いなしです。
初心なカップルのいちゃいちゃ感がずっと堪能できます。
物語に緩急あるものの、一巻のテンションを維持してくれるので安心。
重くなりそうになったら先輩や狐がファニーな方向へ軌道修正してくれます。
浴衣のイタチさんは可愛い。
真一君の言葉に照れるイタチさんは可愛い。
クライマックスで天狗と猿がバトル真っ最中に、ひそひそ話を始めるお二人さん。
読んでいるこっちは、「はいはいわかったわかった結婚結婚」と、応援したくなります。
カッパの子どもを二人でこっそりかくまうシーンは歓喜しました。
続くp.208で期待を裏切らない展開は必見。
犬神を操る新キャラ滝沢さん、良い感じのボクっ娘でした。
『犬神』に『笛』って……、横溝先生かと。
実際横溝ネタが大きく三回、形を変えて挿入されます。
そういう小ネタのサービスに抜かりないところが、嬉しいです。
脳みそを完全オフにして楽しく読める。
妖怪ミニ雑学に「へー」だの「ふーん」だの感心しながら、二人のラブふわ関係を鑑賞してリラックスする。
見事に、ラブコメジャンル小説の役割を果たしてくれていると思います。


主観:(+)

オススメ度:B


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両方受け身初心男女のゆったりまったりラブコメを見たい方にオススメです↓





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名探偵×不良×リア充×痴女×決闘者 ~犯人は誰だ!?~
名探偵×不良×リア充×痴女×決闘者 ~犯人は誰だ!?~
第19回スニーカー大賞<特別賞>



(あらすじ)
 悠人ら五人は『プリン』と名乗る者から脅迫状を受け取る。五人は『プリン』の指示でそれぞれ「名探偵」「不良」「リア充」「痴女」「決闘者」のキャラを演じながら学校生活を送ることを強いられる。悠人らは慣れないキャラ作りに翻弄されながら、『プリン』の正体を暴こうと奔走する。

・ラブコメ部分は星五つ
・転がしがいのある秀逸なアイデア
・衝撃のラスト

良かったポイント。
『なりすましコメディ』というジャンルを全面に押してラブコメにぶっこむ設定、アイデアは非常に面白い。秀逸です。
ハーレムラブコメとして、各ヒロインと主人公との距離の取り方、接近のさせ方のバランスがグッド。
ドタバタ感、パラグラフの締め方(オチの付け方)がしっかりラブコメやってる感じが出ていて安心。
ギャグセンスがツボでした。
p.105の万引き犯の件。
p.118
(ガーン!! という効果音と共に、里奈は積み木をポロリと落とした。)
p.218
「それでもゆーちゃんは健全な男の子なんですか!?」
等。
ヒロインの里奈ちゃんの抜けたセリフがおもしろいです。良い感じのずれ具合がすばらしい!
彼女のダジャレ、作品内では滑っている体ですが、読んでるこちらは爆笑しました。
第八章からのたたみかけは強引で面白かったです。
裏切りの連続は、読んでいて楽しくなりました。

で、がっかりポイント。
キャラの割り当てと、テーマ設定は明らかに練り込み不足だと思います。
まずキャラの割り当てに関して。
せっかくの『なりすましコメディ』を生かし切れていません。
『なりすましコメディ』の何が面白いか。
ポイントはキャラの「本質」と「かりそめ」(偽装)の距離。一人のキャラの中で、「本質のキャラ」と「偽装のキャラ」がズレていればズレているほど面白いのです。
本当の自分とは違うキャラを無理矢理、必死に、一生懸命演じようとするから、端から見ているこっちはおもしろいのです。
p.157~160で、「痴女」を演じる真紀ちゃんが「ちょ、ちょっと恥ずかしいですけど」と言いながら自分のスカートをまくり、悠人君にパンツを見せようとします。
真紀ちゃん、素直すぎです。まじめすぎです。
「痴女」キャラを演じて面白さが生きるのは、自分から迫っておきながら自分が一番赤面してパニックに陥るような「男勝りの初心ながさつ女」か、自分から迫っておきながらエロティックな態度の節々に殺意のオーラを込めて周囲を萎縮させるような「目で人を殺せる冷徹毒舌女」のどちらかではないかと思います。
真紀ちゃんが演じて面白いのは「不良」キャラです。
「不良」キャラの偽装として、口調の変化に一番ギャップが出て面白いのが真紀ちゃんだからです。
で、真紀ちゃんを「不良」に変更した方が、第七章の悠人君の鈍感ネタは生きると思います。
p.227ですよ。
真紀ちゃんがとったとある突飛な行動に対して、
悠人「さっきのって、不良の真似事だったんだろ?」
真紀「……へ?」
悠人「でもあれ、不良の方向性ちょっと間違ってると思うな。確かにああいうのも悪そうなイメージあるけど……。いくら練習とはいえ――ん?」
真紀「ゆーちゃんの馬鹿あああああ!」
ばちんっ!(平手&脱走)
悠人「……あ、練習、続いてたんだ。まじめだなぁ。でも、練習ならもう少し手加減して欲しかったな……痛てて」
みたいに落とす方が、動きがあってかつ悠人君の鈍感さが強調できませんか?
もったいない!
で、本作で「不良」を割り当てられている愛香ちゃん。
口調がぶっきらぼう、かつコミュニケーション苦手(自分の気持ちを正しく他人に伝える能力が低い)、で、ちょっと幼児性あり。
元の愛香ちゃんが「不良」の要素を備えているので『なりすましコメディ』のメリットがかなり薄くなってしまっているのですよ。
ギャルゲの『Kanon』に出てくる「蜂蜜熊さん」がまさにこんなポニテキャラで不良扱いをされていたこともありますし。
また、「不良」キャラを偽装する小細工が口調と竹刀と用語だけというのも弱い気がしました。で、この三つの小細工だけでもちゃんと面白くなりそうなのはやっぱり真紀ちゃんの方なんです。ここのキャストはもう少し練って欲しかったなぁ……。
「リア充」「決闘者」は二人とも素のキャラと偽装キャラが近すぎです。
二人とも素の性格からして、偽装しても違和感がないんですよ。
違和感がないとダメなんですよ! 『なりすましコメディ』は!
里奈ちゃんが「リア充でない理由」を「ダジャレのおもんなさ」だけに託すのはちょっと強引でしょう。
「里奈ちゃんがリア充ではない」ということに説得力がありません。
里奈ちゃんは「リア充」に偽装する以上、実際には「リア充」であってはいけないのです。
致命的なのは、p.142。
里奈ちゃんのモテ描写をやったらダメでしょう。
ラブコメ的には相当面白いシーンですよ。
でも、この作品的には、「リア充」を偽装する里奈ちゃんの面白さが著しく損なわれています。
残念。
惜しいのは「名探偵」の美雪ちゃん。
美雪ちゃんはヒロインズの中では一番無理している感が表現されていて良かったです。
が、努力のシーンを見せすぎですよ。試行錯誤する様子を見せすぎです。
『なりすましコメディ』では「なりすまそうと」苦心するシーンはそんなに面白くないんです。
本人は「なりすましている」つもりなんだけど、全然できてないというシーンが面白いんです。
もっと調子こいだ美雪ちゃんが見たかったです。
テーマ設定に関して。
核心部のネタバレは避けた上で。
美雪ちゃん(名探偵)
愛香ちゃん(不良)
里奈ちゃん(リア充)
真紀ちゃん(痴女)
悠人君(決闘者)
中盤、それぞれの偽装キャラが別のキャラの黒歴史であることが判明します。
つまり、それぞれのキャラは、知らないうちに、自分の黒歴史を隠すために他人の黒歴史を演じていたということ。
自己を否定するのために他者を肯定していたことになります。
読んでいる途中「なるほど!」と思いましたよ。当然物語は、それぞれのキャラが自分の過去をちょっと調子の外れたコミカルなトーンで客観的に見直すことによって、「なーんだ。自分の過去ってそんなに恥ずかしいことじゃなかったんだ」と気づき、自己を見つめ直し、過去を肯定した上で成長していくという展開に向かっていくだろうな、と予想しますよ。
しかし!
結末は予想の斜め横でした。
車道が違うんです。まさかそんなテーマに落ち着かせるとは、予想外でした。
で、実際そういう方向にもっていくからこそ、
それぞれのキャラは自分の黒歴史が他人に演じられているにもかかわらず、反応薄過ぎという点は納得できるのです。
しかし! だとしたら!
最終的に自己否定から自己肯定へというテーマにもっていかないのだとしたら、それぞれのキャラが他キャラの黒歴史を演じる物語上の必要性がまったくないのです。
謎解き要素の一端で済ませるには、重すぎるんです。「え、でも……、この子等、自分の黒歴史を目の当たりにして……、あれ?」と、読んでいる間ノイズとして作用してしまうのです。
それ以上に! それぞれのキャラが自身の黒歴史を見て動揺しないのなら、そもそも冒頭の手紙の強制力が相当弱まって見えるんです。ただでさえ彼らの『弱み』が「ん? そんなのたいしたことなくね?」て程度に見えるのに、さらに「たいしたことなく」見せてどうする!? 「彼らにとってはたいしたことなのだ」ということをもっともっとアピールしてくれないと手紙の強制力への違和感はぬぐい去れません。
本作は、せっかくの『なりすましコメディ』です。
もっとぶっとんだ偽装キャラを設定し提示した方が、登場人物達の慌てふためく様が大きな笑いを生み得るし、「○○力向上」という目的にもマッチしていたのではないでしょうか。
途中放置状態になるある伏線をもっとうまく使えば、ぶっとんだ偽装キャラを提示することなど造作もないことだったと思います。
本作、『なりすましコメディ』としてはそれぞれ演じる偽装キャラが弱く見えるし、テーマは矮小化されて見える。
設定とテーマが互いに互いの魅力を削ぐ残念な出来になっていると思います。
他、不備を上げていけば切りがないので三カ所だけ端的に。
p.110~のギャグは説明不足。p.111(またやっちまった!)という地の文の後にフォローが必要。改稿段階のチェック不足だと思われます。
p.132のセリフ「こういう展開って漫画とかでよくあるでしょう?」は、この世界観で言わせたら、無意味に現実に引き戻されるだけのノイズ。
p.151「りーちゃんは変わらないですね」とp.152「一番変わってないのは、ゆーちゃんかもしれませんね」
この段階では偽装してないとダメなはずの二人がそんなこと言われて、普通に同調するという描写で落ち着かせたのには、読んでいて目を疑いました。p.148で「転校」というワードが出た瞬間に態度豹変させるぐらいの冒険がないと、この小説に「偽装」というルールをもうけた意味がありません。

結論。
ラブコメの断片断片はちゃんと面白いんです。センスが光ります。ただ、一発逆転を狙ったアイデアそのものがあだとなった気がしてなりません。
間違いなく好きな作品ですよ。キャラ同士のアンサンブルはもっと見ていたいと感じましたよ。だからお願いします。アイデアの枠だけ作って安心しないでください。ブラッシュアップしてください。


主観:(+)

オススメ度:C


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一皮剥ける前のドタバタラブコメを今のうちに発掘しておきたい方にオススメです↓






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ほうかご百物語
ほうかご百物語
第14回電撃小説大賞<大賞>



・「あなたの血、吸ってもいいかな」
・絵が可愛い
・新しいタイプのヒロイン
・先輩のキャラ便利!
・妖怪大辞典
・衝撃のラスト

正直に言います。
ドストライクです。
妖怪大辞典を模したおもしろ特集型。
この一冊で妖怪のミニ知識が身につきます。
キャラの立ち位置がはっきりしていて読みやすいですね。
生徒会→出題役
先輩→解説役
真一くん→びっくり&振り回され&苦悩役
イタチさん→解決役
そういう公式を作っておいて、ときどきスパイスをくわえて引き立てる。
このスタイル、クライマックスで一皮むくのが難しいのですが、本作では真一くんに付加した特技を見事に活用していました。
オープニングに置かれたイタチさんとの出会いのシーンと、整合性が取れていて気持ちが良かったです。
お見事!
イタチさんは新しいタイプのヒロインです。
妖怪だから、という話ではありません。
内面のお話。この子、律儀で素直ですごく飲み込みが良いんです。あと、こつこつがんばる努力家です。
自分をガンガン前に押し出してくるような、ヒロインとしての積極性がないんです。
おとなしくてとても「いい子」なんです。
「妖怪」というぶっ飛んだ特徴と、良い具合にバランスが取れていると思います。
このスタイルの作品では毎回書いていますが、
どうしてもそれぞれのエピソードが中だるみに見えがちです。
好きな側からすると「そこがメインなんだよ!」って言いたくなるんですが、一冊の本として読むとやはり中だるみ感はぬぐい去れません。
一冊に時間かけず一気に読む人ほどそう感じるんじゃないでしょうか。
エピソードごとにいちいちブレーキがかかってしまうからです。
四コマ漫画が原作で22分の中にまったく違うエピソードを数個詰め込んだアニメを見たことのある方、もしも長く感じた経験があるなら、同じ理由です。
週刊連載の短編なら、すごく便利なスタイルなんですけどね。
最後に、
p.293は、衝撃的過ぎて声が出ました。


主観:(+)

オススメ度:B


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妖怪とラブコメしてみたい方には、全力でオススメです↓




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ミミズクと夜の王
ミミズクと夜の王
第13回電撃小説大賞



・描写が丁寧
・すっと入ってくる文章
・主人公ミミズクのキャラの安定感
・安心して物語に身を委ねられる名作

読み始めてすぐ、丁寧に訥々と綴られる描写と、気持ちの良い肩すかしを食らわせてくるミミズクというキャラに心を掴まれました。
居場所を追われ、居場所を求め、居場所を壊され、そうして自分の意思で居場所を選択する。
シンプルなテーマをまっすぐに。
ディズニー映画のような雰囲気を持っています。
起承転結がきれい。
転の部分の嫌な感じとか、本当によく味が出ています。
おかげでp.183が、すっごく気持ち良いんですよね。
ページの前で叫びたくなりました。
本当に良い作品だと思って読み進めていました。
しかし!
一カ所だけごめんなさい。
p.247~の展開が私には傲慢に感じられます。
彼の精神的な成長が踏みにじられたような気がして、ものすごく腹が立ちました。
彼が自身で解決しようとしたことを、成長へのご褒美とでも言わんばかりに他者が勝手に解決するなんて、余計なお世話以外のなんなんでしょう。
それで彼が救われたと感じたなら、結果論でオッケーなんですか?
彼の運命は彼のものでしょう。彼が選択すべきことでしょう。おっちゃんの台詞は後出しじゃんけんですよ。
自分の居場所は自分で選択するって、この作品のテーマじゃなかったんですか?
物語の説得力を欠いているように感じられます。
ですが、そうすることで美談だと感じる人もいるのでしょう。
この作品、メリハリの付け方がホントに上手いですよ。
だから本気でぶち切れるほど物語に入り込んで読んでしまいました。
怒気を込めて、全力でオススメします。


主観:(-)

オススメ度:A


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美談か醜談が確かめたい方にオススメです↓





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