読書感覚文
主観と感覚のままに書き殴ります。ネタバレは、未読の方が今後読んでも楽しめる範囲で
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できそこないの魔獣錬磨師
できそこないの魔獣錬磨師
第27回ファンタジア大賞<金賞>



(あらすじ)
スライムトレーナーのレインがドラゴントレーナーのエルニアに喧嘩を売られる。勝利したレインはエルニアに交際を迫られ困る。

・モンスター萌え小説としては☆5つ
・ラストのたたみかけで、良い小説を読んだ気になれる
・着地は綺麗

登場するモンスターが可愛いです。
スライムのペムペムはもはやヒロイン級。
ホースドラゴンのキールさんの人間臭さはシュールで面白い。心の声でレインと掛け合いをするシーンは笑えます。

第一章の決闘申し込み、第二章のドラゴン遭遇、第三章p.192の突然の宣告、第四章のp.258のにやり。
しっかり物語のエンジンをかけるポイントが定まっているので、安心して読み進められます。
非常に技術のある作者さんだと思います。

p.265の昇華ロジックは面白かった。
最弱と言われるスライムが、なぜ他の強敵と戦えるのか?
無謀に見えた主人公の行動が、実は理にかなっていたという事実をひとつ加えるだけで、物語の説得力が大きく変わってきます。お見事!

ここからちょっとまずいと感じたところを紹介。
ネタバレを含みます。

三人称で書かれていますが、視点のブレはちょっと気になりました。気になるというか、ノイズでした。こんなのでページをめくる手をとめさせないで!
完全三人称なら客観的判断できないキャラの内面吐露は控えるべきですし、疑似三人称なら一文中やパラグラフ中に視点を動かすべきではありません。
p.32
「自分に集まった好奇の視線に、アリカが視線を泳がせながら自信なさそうに身を引く。」(アリカ、アリカ以外の視点)
p.33
「二人のやり取りなど露知らず、好奇心を抑えられなくなったレインが、じれったそうに身体を揺すりながらクーラーボックスを指差す。」(レイン以外、レイン、レイン以外の視点)
p.34
「イメージトレーニングを二、三飛び越えてきたレインの言葉に、アリカがビクッと身体を縮こまらせる。ただでさえ小柄なアリカがますますもって小さくなった。」(アリカ、アリカ以外の視点)
↑の三行はすべて同じパラグラフです。
断定的な主体表現と、「じれったそう」など様態を示す客体表現が混ざっているせいで気持ち悪く感じるのかもしれません。

決闘シーン、第二章の課題のシーン、長かったです。
おしゃべり、単体のギャグとしては笑えるのですが、展開がいちいち止まるのがもどかしかったです。

第三章p.202でレインくんがぶち切れるシーンはさすがに強引すぎです。
実はここ、アリエルさんの思惑は別にあったというオチを第四章でつけるためのミスリード。レインくんの独り相撲でした、とオチをつけるためのシーン。その意図はわかります。
にしても!
起因となるp.201のアリエルさんの「まぁ、落ち込むことはないわよ」に続く台詞が弱すぎる。アリエルさんが、それほど「生まれ持った資質至上主義」に見えないのです。
そのせいで、このシーン、
レインくんが常日頃から溜め込んできた不満をぶちまけるために、目上の人間の言葉尻を取っているように見えてしまうのです。
レインくんが勝手にアリエルさんの言葉を拡大解釈して、こじつけて怒っているように見えるのです。
正直、初めて読んだときは「ヒステリー起こした被害妄想野郎」の八つ当たりに見え、呆れてしまいました。
しかも、この男、「言ってやったぜ!」とふんっと鼻息まで立てます。
確かにゴブリン使いの取り巻きにバカにされるシーンが第一章にあるので、そういう不満をレインくんが抱くのはわかります。が、アリエルさんがそいつらと同類だとはこの時点で判断できない。判断できるように描かれていない。
それこそ作者さんの狙い通りなのかも知れません。
が、第四章のどんでん返しのために、主人公のレインくんをここまで貶める必要はないと思います。
事実、単細胞熱血漢キャラの説得力は損なわれている。単細胞熱血漢キャラが、相手の直接表現に対してついカッとなるというのならわかります。しかし、相手の言葉の意図をくみ取って言ってもないことに対して切れたのでは、「単細胞である」という自分のキャラを守るために反応したように見える。単細胞キャラである自分に酔っているように見える。計算高い女の「私って天然なんだぁ~」の男版「俺って単細胞だからさぁ~」というナルシズムにさえ見えてしまいました。
ここは、アリエルさんの方をもっと嫌なキャラに見せてもよかったのではないでしょうか?
どんなに嫌なキャラをここで演じたとしても、ラストで「妹のためを思って」という台詞(p.125「親友のためを思って」の対になる)を吐かせれば、万事綺麗に解決。アリエルさんの異常な妹愛というのも、もっと強調できたのではないでしょうか。


主観:(-)

オススメ度:B


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災厄戦線のオーバーロード
災厄戦線のオーバーロード
第27回ファンタジア大賞<金賞>



(あらすじ)
最優秀ポンコツ訓練生琴音が、若き最強室長笹宮に目をつけられる。彼の指導の下、彼女は自分なりの戦い方を身につけてゆく。

・キャラクター設計がすばらしい
・プロットがお見事
・明白な欠陥を抱えながらも、ちゃんと面白い!

キャラクターが非常に立体的。
ヒロインの琴音ちゃん。最優秀訓練生でありながら、現場で二ヶ月経っても昇格できず、劣等感を抱いているという初期設定がいい!
またサブキャラにもぬかりなし。
それぞれのキャラの性質に沿ったギャグが展開されるため、ちゃんと笑える!
壱彦くんの言葉を知らないネタしかり、雪子さんの何言ってるのかわかんないネタしかり。
シリアスなシーンでも、きちんとキャラクターの個性に則っていれば、生きたギャグとしてクッションの役割を果たす!
本作はそれを証明してくれています。

プロットが明確に面白いです。
首長竜に襲われる→助けてくれた男に目をつけられる→男のとりまきの女にも目をつけられる→女と決闘する話を勝手にとりつけられる→自分も強くなりたいと奮起→決闘当日に再び災難に見舞われる
p.36にて琴音ちゃんの不運属性が示されます。
物語に勢いをつけるために絶対的に必要なヒヤヒヤ展開が、それですべて辻褄が合うように施されているのが憎い。
この運というネタに関してのオチも綺麗でした。

ビニール傘が透明である理由が結構怖い。
だからこそ、目の前の敵から目を逸らさない、逃げない、ということに繋がるのでしょう。テーマとすごく合っていると思います。

……ちゃんとしているからこそ、本当にもったいないです。
読了後にこんなに悔しい思いをしたのは久しぶりかも知れません。

本作、このストーリーテリングの形を取るならば、絶対に疑似三人称で書かないと駄目でしょう?!
一人称であんなに視点が変わったら、どう見ても読みづらすぎです。
「私」「わたし」「あたし」っていくら書き分けたからって駄目。空行ごとにいちいち誰視点に変わったのか考えないといけないのは、はっきり苦痛です。
さらにその上でいきなり過去の話に飛んだりしたらもうしっちゃかめっちゃかです。
途中で嫌になる読者がいてもまったく不思議じゃありません。

このプロットなら、琴音ちゃんの一人称でずっと通して書くのもありだったと思います。
むしろその方が、最終的にテーマが綺麗にまとまって見えるように描きやすいのではないでしょうか。
ポンコツ琴音ちゃんが、頭のおかしい最強室長にしごかれて、自己実現を果たす。琴音ちゃんの内面をしっかりと詰めていく路線もあったのではないでしょうか。

笹宮室長が主人公だという説があるようですが、正気ですか?
彼は、すごい状態で登場して、すごいこと本編でやって、すごいなぁと称えられて去ってゆきます。しかも共感を呼びにくいタイプの最強変人。
小説の主人公として赤点レベルです。
彼の内面を描く度に、彼の魅力が下がります。
手の内は読者に明かさずに、厳しく変質的に琴音ちゃんに当たり続けてよかったキャラだと思います。
彼の過去とか思惑なんて、秘書の人に適当に台詞で喋らせておけば、読者の想像もかき立てられます!
(漫画の『アカギ』の場合、南条さん等の取り巻きが語り部であることに気付いて!)

p.107で三バカを壱彦くんが殴るシーン。
それ、琴音ちゃんの知らない場所でやったら駄目でしょう。
三バカをぎゃふんと言わせるのは琴音ちゃんの役割です。
テーマ的に琴音ちゃんが成長する機会をただ奪うだけの愚行。本当にもったいないです。
さらにこのシーン「俺」という一人称で書かれているので、初見時、一瞬笹宮室長が出てきたようにも錯覚して困惑しました。

総じて、
表現方法でかなり損をしている作品です。
第一章終了時点までの展開の勢いがなければ危うく「オススメ度:C」ってつけるところでした。
本当にもったいないです。ただ、これが作家性だと言うのなら、……諦めます。


主観:(+)

オススメ度:B


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俺の妹を世界一の魔砲神姫にする方法
俺の妹を世界一の魔砲神姫にする方法
第27回ファンタジア大賞<銀賞>



(あらすじ)
世界一の魔砲使いタケヒロは過度なシスコンだった。妹のナオが隠し事をしていることに気付いた彼は、友人の女子高生モリノを脅し、ストーキング行為に協力させる。ナオの想いを知ったタケヒロは、ナオの夢を叶えてやろうと尽力する。彼が目指すのは「まーるい世界」。

・ヒロインの魅力はある
・あらすじと本編の齟齬にびっくり
・あまりにも構成とテーマに難あり

ヒロインの新井場さんがかわいい。
弱みを握られて仕方なく協力させられる感じがgood!
秀でた能力を持った子が嫌々悪事に付き合わされるというシチュエーションは、なかなか面白かったです。そこからさらに転げ落ちていくともっと面白くなったんですが……。読んでいる最中は期待して楽しく読み進めることができました。

かなり問題の多い作品です。
もしかすると推敲の過程で誰かに余計なことを言われたのではないかと邪推するほど。

まず構成。
疑似三人称でころころ視点移動、時間移動がありすぎて読みづらい。
読みづらさを増強しているのが、空行にある「*」。たとえばp.173、時間移動も視点移動も場所移動もないのに空行「*」は混乱と苛立ちを招くだけでした。せめてちゃんと使い分けしてほしかった。

表現がくどい。
p.6「
(略)それも、何処かにスクリーンがあるわけではなく、空気しかない宙にである。

p.8「
(略)女子高生は肩の力がガクッと抜けた。
『あんたねぇ……』
 女子高生は呆れかえった。

p.198「
 奈緒美は座っていた。この街は坂が多く、一番上まであがると街中が見渡せる丘がある。奈緒美が座っていたのはそんな場所だった。

重複表現、まわりくどい言い回しは必ずしも悪ではありません(魅力を生むことだってたくさんあります)が、何度も続くと読みづらいだけです。

【隅付き括弧】の使い方について。
p.27で【奇跡】って出てきたときは、何かこの世界独自の用語なのかと思いました。【魔砲戦騎】【イグニゾン】【魔法使い】等と同じく。p.31でも【奇跡】と繰り返され、読む方としては「この【奇跡】なるものはいったい何のことを指しているのだろう?」と思いますよ。
しかし、p.92で妹の台詞内に出てくる「奇跡」には【隅付き括弧】がついていない。伏線かと思いましたよ。それがp.120で新井場さんの台詞で登場した「奇跡」にも【隅付き括弧】がついてない。しかも、物語上「奇跡」という単語が、我々が知っている「奇跡」という意味でしか使われない。
氷解するのがp.161。オグマちゃん視点の地の文「けれどまさかここで【それ】を見つけるとは思わなかった。」
強調したかっただけかーい!!
ルビで振る「、、」と同じ意図で使ってるだけなんですよね。作者さん。こんな二重の意図で使ったら混乱を招くだけだと思います。担当さん、ルビ振り機能のある『一太郎』を下書き段階で貸してあげてください。
しかもp.27で「奇跡」を強調するのって、そんなに意味がないんですよ。ラストの布石ということは百も承知です。が、ここで強調されても違和感の方が勝ってしまい、むしろノイズになると思います。

p.145の挿絵は困り眉毛で引きつった笑顔じゃないと駄目。
絵師さんにどんな指示を出してこうなったのか……。ここは間違いなく担当さんの責任。

テーマについて。
主人公タカヒロの監視行為は、善意でやったことだから許される(?)
こういう描き方って、タカヒロの唱える「まーるい世界」をものすごく不快に見せている気がしてなりません。
隠し事禁止! 嘘は絶対悪! みんながコミュニケーションを通してわかり合えば、平和への一歩!
なんだか押しつけがましく感じられるのです。
で、この「押しつけがましく感じられる」人種を否定している部分に、傲慢さを感じてしまうのです。
この主人公がp.179にて誇らしげに言う台詞。
「ああやって仲間と話しているうちに、いっしょに何かやっているうちに、みんなのことがよくわかってくる」(中略)
「そして最後に自分が何者だかわかってくる」(中略)
「ああいう一見くだらないように見えることをやっていく中で、やっと自分がわかるんじゃないかって。それで、次に、ようやく世界のことがわかるんだよ」
他者のことや世の中のことをわかった気になっている勘違い野郎の上から目線の説教を読まされている感じがして、かなり不愉快でした。
主人公を中途半端な未熟者に設定したことによる失敗です。
成長の余地を持たせたかったのはわかります。が、そのせいでキャラクターの説得力が失われたら元も子もないでしょう。
さらに、本質的には違うはずのテーマをいくつもあっちこっちに散らかしているせいで、何が言いたいのかわかりにくくなってしまっています。

ラストの迷シーン。
よくわからない空間でよくわからない人から妹ちゃんがお説教を受ける。お説教を受けたら奇跡が起きる。
一番大事なところにもってきているので、これがホントにやりたかったテーマなのでしょう。やりたかったのだと仮定します。
だったら!
主人公の自己実現であるとか、偏愛であるとか、個人的なテーマは別作品にとっておいて、
本作では、
こんな奴いねーよレベルの完璧超人でもいいからきちんと成熟した主人公を設定しておいて、
単純な勧善懲悪のプロットを軸にテーマを昇華させる方が、綺麗にまとまったんじゃないかと思います。
間違っても『兄が妹の生活を監視して何が悪い!?』『妹育成アクションコメディ』と帯つけて出すような作品ではありません。
もしその帯に拘りたいのであれば、
「クズ兄貴がちょっと成長して妹の気持ちを理解するようになる」という程度の軽い結末でオチのつくおバカコメディに振り切るべきだったと思います。

「妹愛」「妹の自己実現」「タカヒロの世直し」「タカヒロの成長」「居場所」「奇跡」「他者を思いやる心」
テーマを絞らずにぐっちゃぐちゃに混ぜ込んだ結果、「何が言いたいのかよくわからないけどなんか説教された」というマイナス感情しか残らない残念な出来でした。


主観:(-)

オススメ度:C


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名探偵×不良×リア充×痴女×決闘者 2 ~偽装対決!?~
名探偵×不良×リア充×痴女×決闘者 2 ~偽装対決!?~



(あらすじ)
部員がそれぞれ割り当てられたキャラクターを校内で演じ続けるという偽装部に、生徒会副会長の闇根が入部を希望してくる。闇根は入部を拒否されマスカレード部を設立。部室をめぐって偽装対決をもちかける。

・ギャグはおもしろい
・キャラクター同士のやりとりは賑やかで楽しい
・今年のワースト候補

新キャラ二人、闇根くんと水瀬さんがよかったです。
闇根くんの扱いのひどさが笑えます。名前を間違われるギャグの天丼。マスカレード部の面々にさえゴミのように扱われる感じ。全校生徒にまで相手にされていないp.263の不憫さは最高。
ギャグはだいたい面白いです。
p.62からの3通のお悩み相談ネタは普通に笑いました。
5章の校長と奥さんのネタのスカシもなかなか。
水瀬さんの「ナノダヨ」ネタはもっと引っ張って欲しかった。せめてp.77、p.78の終わりまでは強引にでも引っ張った方がもっと笑えました。
出てくるだけでページのテンションが上がるキャラを二人も登場させて、豪華だなぁと感じました。

もし3巻が出たら必ず買います。なので、ここから先の辛辣なコメントをお許しください。

はっきり、テーマの描き方を失敗していると思います。
「居場所を守るために闘う」
登場キャラにそういう台詞を何度も吐かせています。
それ、直接的な表現で言わせたら駄目でしょう。
偽装部=居場所=五人の黒歴史を抱えたキャラ達が安らげる場所
言いたいことはわかります。
しかし、当事者であるキャラクター達が「居場所を守る」とかそのまま口に出して言ってしまうと、
「自分の過去と向き合う」「殻を破る」ことから逃避、ぬるくて閉鎖的な空間に閉じこもって仲間同士で甘やかし合うことを肯定して開き直っているように聞こえるのです。

他者否定の閉鎖的な空間という印象を強める原因、
闇根くんの入部拒否の理由を、「生理的に受け付けない」で片付けるのは、いくらなんでも乱暴すぎ。
ギャグとしては面白いのに、最終的に「居場所」というテーマに落とし込む上では、冒頭の闇根くんの仲間はずれネタが致命的になっていると思います。
さらに、主人公サイドが公共財物を破壊してしまい隠蔽のために金策に走るというプロットも不健全。
「実は他に犯人が居ましたー」というオチをつければ一件落着……ってそんなバカな!
6章に至るまで主人公サイドが、
・悪事を隠すために奔走する
・しかもそれはある生徒を入部させないため
・さらにそれを「居場所を守る」美談っぽく描く
ケイパーものでも無い限り、主人公側へ感情移入しにくい。悪い意味での「ひどさ」が際立ってしまい、かなりのノイズになっていると思います。せっかくのギャグシーンも、そのノイズのせいで笑いにくくなってしまっています。
まさか、物語から完全に目を背けてシーンごとのギャグだけを拾い読みするような、本末転倒な読み方を推奨しているわけではないでしょう。もし仮に「テーマなんてあってないようなもの」前提で書かれている作品だと言うのならば、テーマを全体に臭わせすぎですし、テーマが大きく関わるように設定してしまった物語の根幹からして失敗だと言わざるを得ません。

何より問題なのは、この6章までの話が、新キャラの顔出しをするためだけに設けられた、まったく物語の推進力にならない短編集であること。
部分部分はちゃんと面白いのです。
おそらく作者さんは真面目なんだと思います。だからこれをやっちゃったのだと思います。長編で全シーンきっちり濃密にギャグを敷き詰めてキャラ立てに走りすぎると、読者が読んでいる最中「ワンシーンが長い」「話が進まない」という感想を抱きやすいのです。
マスカレード部が出てくるのが7章。
本気で「居場所」というテーマを描きたかったのであれば、7章~10章の展開をもっと練って一つにまとめるべきだったと思います。
6章までに伏線をちりばめているのはわかります。でも、木を森に隠すために森をジャングルにする構成は単純に長くてだれます。

あと、偽装の強制力がなくなったことによって「偽装」そのものの面白さはほとんどなくなってしまいました。
読みようによっては「こいつらなんのためにこんなことやってんの?」と首を傾げるレベル。「居場所だから」という理由付けにはやっぱり限界を感じてしまいます。

総じて、
ワンシーンごとのギャグセンスが光る!
テーマの描き方が残念!
下手に良さげなテーマに落とし込もうとせずに、ぶっ飛んだ設定とコメディに振り切ってしまった方が、みんなが幸せになれると思います。


主観:(+)

オススメ度:C


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下読み男子と投稿女子
下読み男子と投稿女子 -優しい空が見た、内気な海の話。



(あらすじ)
ライトノベル新人賞の下読みバイトをする高校生男子が見つけた投稿小説は、同級生女子が書いたものだった。彼女は一次審査通過をしたことがないという。彼は彼女に接近し……。

・見事な青春小説
・展開がわかりやすい
・引き際の鮮やかさに感服

本当に安心して読み進めることができました。
出会い→衝突→接近 の展開の持って行き方が見事。
着実に順序立てて距離を詰めてきたからこそp.82の「キター!」という感動は大きい。
日常を描きながら展開の起伏をつけるお手本のような作品。
主人公とヒロイン、出会い、それぞれの掘り下げ、それぞれがそれぞれの思い、葛藤、壁を乗り越えて……、クライマックスへ!
vsババア戦は燃えました。ババアを完全悪と切り捨てず地に足の着いたフォローを施すところがまたステキ。
ヨロイザメというマスコットが非常に良いアクセントになっています。
気の利いた台詞、表現は野村先生ならでは。
p.120
「とても……広い人だわ」
ヒロインのキャラが、同じファミ通文庫の黒崎麻由と被っているように見え、読んでいて少し罪悪感を抱きました。汚れた見方をしてしまって申し訳ない。
エピローグで拍手喝采。大変完成度の高い良作でした。

最後に。サブタイトルの『優しい空~云々』はいらん。下品。本作の質を落としている。抽象的だという理由でボツにしたタイトル『優しい空と内気な海』を、ちょい変えしてサブとしてお披露目したのだと邪推。『優しい~』はメインタイトルにしないのなら、出すべきでは無かった。サブタイトルはよほど必要性に駆られない限りは付けるべきで無い。


主観:(+)

オススメ度:A


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猿渡さん家のラグナロク
猿渡さん家のラグナロク



(あらすじ)
家族でMMORPG『ライブライフオンライン』にはまる猿渡家。ある日、価値観の違う隣人一家と大げんか。PvPトーナメントで決着をつけようと言うが……。

・田口作品、久々のファミ通文庫で最新作きた!
・さっと読めてふっと笑える
・安定の田口節

まず田口作品全般に関して。
田口作品の魅力はなんといってもざーっと勢いだけで読めるシンプルさ、メリハリだと思っています。
ゆえに、凝った設定、練り込まれた伏線、リアリティ溢れる描写、キャラクターの掘り下げを求めるのはそもそも間違い。じっくり腰を据えて読むような作品ではそもそもないことを明言しておきます。
ある程度の展開をきっちりと並べ、コンパクトに話をまとめる技量!
読者がライトノベルに何を求めるか? 「さくっと読めてそれなりに楽しめる」ことを求めるなら文句なしに田口作品を推します。
それが魅力です!

で、それはそれとして、本作はというと……
「おもしろくなくはない」
という読了感。
『吉永さん家のガーゴイル』の11巻よりは上。『Zぼーいずぷりんせす』の1巻よりは下。という感じ。
展開はきっちり用意されているし、イベントも盛りだくさん、ギャグも入っている。ラストのミューズの対応には唸るものがありました。まとめ方はさすがの技量。
しかし、「なんかぬるい」のです。
残念ながら、心地よいタイプの「ぬるさ」ではなく、消化不良タイプの「ぬるさ」の方です。
中盤、主人公サイドへの追い込みがあまりに緩すぎる。「え!? その程度?」というぬるい展開を、無理矢理盛り上げているような。「くだらないことに登場人物が本気になっている!」というスカシギャグとして取るのは無理です。スカシとしてはあまりに重いし、追い込みとしては軽すぎる。
実際の家族がオンラインゲームをやっているという初期設定そのものが、物語全体のぬるさを作り出している気がしてなりません。
「寄せ集めの家族」の対比として「実際の家族」を主人公として据えるのであれば、現実世界の描写は必要だったのでは無いでしょうか?
現実世界をまったく描かないというのは面白いアイデアであったはずなんですが……
結果として、甘やかされた世界で甘やかされ続ける人達が互いに甘やかし合っているという、嫌な取り方もできる作品に仕上がってしまったと思います。
ゲーム内という舞台設定でハートフルをやるのは、実はかなりハードルの高いことなのかもしれません。
田口先生独自のシュールなギャグがうまく生きてない部分が散見されるのも痛い。
『ガーゴイル』のような「ごく普通の家庭に門番が居る」「町の人の順応性が高すぎる」「なぜか怪盗やら錬金術師がいる」という笑いが成立するのは、舞台が我々が普段生活しているのと同じような普通に見える町(物語内制限が読者に想像可能な舞台)だから。シュールなギャグが成立するためには舞台と事象のギャップが必要なんです。『ガーゴイル』の「もうなんでもありじゃねぇか!(笑)」という面白さは、舞台設定によるところが大きいと考えます。
本作のように元からなんでもあり見える舞台(物語内制限が読者にはっきりと明示できない舞台)でシュールなギャグをやられても、その「おかしさ」「変さ」が読者には想像しにくい。結果、狙った笑いがずいぶん目減りしてしまっていると思います。

それでも!
やっぱり嫌いになれない田口作品!
ぬるさのために起伏がなだらかなものの、クライマックスのどんでん&どんでんには一定量の面白さがありますし、キャラ同士のアンサンブルは楽しい。全体の八割以上のシーンに二人以上のキャラが登場しているというのは、展開をわかりやすくするための大きなポイントです。
読了時間に対する満足度は低くないです!
さくっと余暇の時間を楽しみたい方にオススメです!


主観:(+)

オススメ度:B


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ゼロから始める魔法の書Ⅳ ―黒竜の魔姫―
ゼロから始める魔法の書Ⅳ ―黒竜の魔姫―



(あらすじ)
ゼロと傭兵は船旅の途中、竜に襲われ黒竜島に漂着する。その島では7年前に伝来したという魔法が広く普及していた。

・ケンタウロスと傭兵のかけあいが楽しい
・続き物らしくなってきた
・リンゴ飴のシーンにほっこり
・世界観が面白い

ゼロ&よーへーの目的をはっきりとさせてくれているので、読みやすいです。
見所としては、「作った者」と「使う者」の対比でしょう。
p.92
「我が輩の生み出した魔法が我が輩の手を離れ、我が輩の思惑とは違う使われ方をしている」
魔法によって救われた者がいる。一方で、魔法によって死んだ者がいる。
作った者の責任。使った者の責任。なかなか考えさせられます。
小走先生は、前作でも共和制の嫌な部分を浮き彫りされていました。社会的な問題を、独特のファンタジー世界の中で、目に見える形にする。そんな作家性が四作通じて見えてきました。今後の冒険にも期待が膨らみます!

ちょっとだけ不満点をあげるとするなら、長い。
城からじいちゃん家まで移動するだけのシーンっている?
前夜祭のシーンも長く感じました。せっかくの読者サービスであろう風呂シーンも、読んでいる最中は「このシーンいる?」って思ってしまいましたごめんなさい。
それらのシーンで交わされる王女との会話でキャラクターを掘り下げておいて、じっくり感情移入させておいた上で、ラスト展開の「このやろう!」という不快感を引き立てる意図はわかります。
しかし、やはり読み終わった後に「あのシーンって無くても話通ったよなぁ……」とか頭ちらついてしまうということは、どれかカットもしくは短くする余地があったのではないのかなと思います。
それぞれのシーンが謎解きによるつながりを持たずに並列されていると、読んでいて鈍重に感じます。
ディテールと綿密な世界観描写というのは小走先生の持ち味かもしれませんが、やはり鈍重さは展開の失速を招く危険因子。
300ページ超えるなら超えるだけの理由(300ページを支えられる謎なりテーマなりアイデア)が欲しいのが正直なところ。
二巻第六章の謎解きシーンや、三巻p.208のような爆発が欲しい!


主観:(+)

オススメ度:B


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