読書感覚文
主観と感覚のままに書き殴ります。ネタバレは、未読の方が今後読んでも楽しめる範囲で
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名探偵×不良×リア充×痴女×決闘者 ~犯人は誰だ!?~
名探偵×不良×リア充×痴女×決闘者 ~犯人は誰だ!?~
第19回スニーカー大賞<特別賞>



(あらすじ)
 悠人ら五人は『プリン』と名乗る者から脅迫状を受け取る。五人は『プリン』の指示でそれぞれ「名探偵」「不良」「リア充」「痴女」「決闘者」のキャラを演じながら学校生活を送ることを強いられる。悠人らは慣れないキャラ作りに翻弄されながら、『プリン』の正体を暴こうと奔走する。

・ラブコメ部分は星五つ
・転がしがいのある秀逸なアイデア
・衝撃のラスト

良かったポイント。
『なりすましコメディ』というジャンルを全面に押してラブコメにぶっこむ設定、アイデアは非常に面白い。秀逸です。
ハーレムラブコメとして、各ヒロインと主人公との距離の取り方、接近のさせ方のバランスがグッド。
ドタバタ感、パラグラフの締め方(オチの付け方)がしっかりラブコメやってる感じが出ていて安心。
ギャグセンスがツボでした。
p.105の万引き犯の件。
p.118
(ガーン!! という効果音と共に、里奈は積み木をポロリと落とした。)
p.218
「それでもゆーちゃんは健全な男の子なんですか!?」
等。
ヒロインの里奈ちゃんの抜けたセリフがおもしろいです。良い感じのずれ具合がすばらしい!
彼女のダジャレ、作品内では滑っている体ですが、読んでるこちらは爆笑しました。
第八章からのたたみかけは強引で面白かったです。
裏切りの連続は、読んでいて楽しくなりました。

で、がっかりポイント。
キャラの割り当てと、テーマ設定は明らかに練り込み不足だと思います。
まずキャラの割り当てに関して。
せっかくの『なりすましコメディ』を生かし切れていません。
『なりすましコメディ』の何が面白いか。
ポイントはキャラの「本質」と「かりそめ」(偽装)の距離。一人のキャラの中で、「本質のキャラ」と「偽装のキャラ」がズレていればズレているほど面白いのです。
本当の自分とは違うキャラを無理矢理、必死に、一生懸命演じようとするから、端から見ているこっちはおもしろいのです。
p.157~160で、「痴女」を演じる真紀ちゃんが「ちょ、ちょっと恥ずかしいですけど」と言いながら自分のスカートをまくり、悠人君にパンツを見せようとします。
真紀ちゃん、素直すぎです。まじめすぎです。
「痴女」キャラを演じて面白さが生きるのは、自分から迫っておきながら自分が一番赤面してパニックに陥るような「男勝りの初心ながさつ女」か、自分から迫っておきながらエロティックな態度の節々に殺意のオーラを込めて周囲を萎縮させるような「目で人を殺せる冷徹毒舌女」のどちらかではないかと思います。
真紀ちゃんが演じて面白いのは「不良」キャラです。
「不良」キャラの偽装として、口調の変化に一番ギャップが出て面白いのが真紀ちゃんだからです。
で、真紀ちゃんを「不良」に変更した方が、第七章の悠人君の鈍感ネタは生きると思います。
p.227ですよ。
真紀ちゃんがとったとある突飛な行動に対して、
悠人「さっきのって、不良の真似事だったんだろ?」
真紀「……へ?」
悠人「でもあれ、不良の方向性ちょっと間違ってると思うな。確かにああいうのも悪そうなイメージあるけど……。いくら練習とはいえ――ん?」
真紀「ゆーちゃんの馬鹿あああああ!」
ばちんっ!(平手&脱走)
悠人「……あ、練習、続いてたんだ。まじめだなぁ。でも、練習ならもう少し手加減して欲しかったな……痛てて」
みたいに落とす方が、動きがあってかつ悠人君の鈍感さが強調できませんか?
もったいない!
で、本作で「不良」を割り当てられている愛香ちゃん。
口調がぶっきらぼう、かつコミュニケーション苦手(自分の気持ちを正しく他人に伝える能力が低い)、で、ちょっと幼児性あり。
元の愛香ちゃんが「不良」の要素を備えているので『なりすましコメディ』のメリットがかなり薄くなってしまっているのですよ。
ギャルゲの『Kanon』に出てくる「蜂蜜熊さん」がまさにこんなポニテキャラで不良扱いをされていたこともありますし。
また、「不良」キャラを偽装する小細工が口調と竹刀と用語だけというのも弱い気がしました。で、この三つの小細工だけでもちゃんと面白くなりそうなのはやっぱり真紀ちゃんの方なんです。ここのキャストはもう少し練って欲しかったなぁ……。
「リア充」「決闘者」は二人とも素のキャラと偽装キャラが近すぎです。
二人とも素の性格からして、偽装しても違和感がないんですよ。
違和感がないとダメなんですよ! 『なりすましコメディ』は!
里奈ちゃんが「リア充でない理由」を「ダジャレのおもんなさ」だけに託すのはちょっと強引でしょう。
「里奈ちゃんがリア充ではない」ということに説得力がありません。
里奈ちゃんは「リア充」に偽装する以上、実際には「リア充」であってはいけないのです。
致命的なのは、p.142。
里奈ちゃんのモテ描写をやったらダメでしょう。
ラブコメ的には相当面白いシーンですよ。
でも、この作品的には、「リア充」を偽装する里奈ちゃんの面白さが著しく損なわれています。
残念。
惜しいのは「名探偵」の美雪ちゃん。
美雪ちゃんはヒロインズの中では一番無理している感が表現されていて良かったです。
が、努力のシーンを見せすぎですよ。試行錯誤する様子を見せすぎです。
『なりすましコメディ』では「なりすまそうと」苦心するシーンはそんなに面白くないんです。
本人は「なりすましている」つもりなんだけど、全然できてないというシーンが面白いんです。
もっと調子こいだ美雪ちゃんが見たかったです。
テーマ設定に関して。
核心部のネタバレは避けた上で。
美雪ちゃん(名探偵)
愛香ちゃん(不良)
里奈ちゃん(リア充)
真紀ちゃん(痴女)
悠人君(決闘者)
中盤、それぞれの偽装キャラが別のキャラの黒歴史であることが判明します。
つまり、それぞれのキャラは、知らないうちに、自分の黒歴史を隠すために他人の黒歴史を演じていたということ。
自己を否定するのために他者を肯定していたことになります。
読んでいる途中「なるほど!」と思いましたよ。当然物語は、それぞれのキャラが自分の過去をちょっと調子の外れたコミカルなトーンで客観的に見直すことによって、「なーんだ。自分の過去ってそんなに恥ずかしいことじゃなかったんだ」と気づき、自己を見つめ直し、過去を肯定した上で成長していくという展開に向かっていくだろうな、と予想しますよ。
しかし!
結末は予想の斜め横でした。
車道が違うんです。まさかそんなテーマに落ち着かせるとは、予想外でした。
で、実際そういう方向にもっていくからこそ、
それぞれのキャラは自分の黒歴史が他人に演じられているにもかかわらず、反応薄過ぎという点は納得できるのです。
しかし! だとしたら!
最終的に自己否定から自己肯定へというテーマにもっていかないのだとしたら、それぞれのキャラが他キャラの黒歴史を演じる物語上の必要性がまったくないのです。
謎解き要素の一端で済ませるには、重すぎるんです。「え、でも……、この子等、自分の黒歴史を目の当たりにして……、あれ?」と、読んでいる間ノイズとして作用してしまうのです。
それ以上に! それぞれのキャラが自身の黒歴史を見て動揺しないのなら、そもそも冒頭の手紙の強制力が相当弱まって見えるんです。ただでさえ彼らの『弱み』が「ん? そんなのたいしたことなくね?」て程度に見えるのに、さらに「たいしたことなく」見せてどうする!? 「彼らにとってはたいしたことなのだ」ということをもっともっとアピールしてくれないと手紙の強制力への違和感はぬぐい去れません。
本作は、せっかくの『なりすましコメディ』です。
もっとぶっとんだ偽装キャラを設定し提示した方が、登場人物達の慌てふためく様が大きな笑いを生み得るし、「○○力向上」という目的にもマッチしていたのではないでしょうか。
途中放置状態になるある伏線をもっとうまく使えば、ぶっとんだ偽装キャラを提示することなど造作もないことだったと思います。
本作、『なりすましコメディ』としてはそれぞれ演じる偽装キャラが弱く見えるし、テーマは矮小化されて見える。
設定とテーマが互いに互いの魅力を削ぐ残念な出来になっていると思います。
他、不備を上げていけば切りがないので三カ所だけ端的に。
p.110~のギャグは説明不足。p.111(またやっちまった!)という地の文の後にフォローが必要。改稿段階のチェック不足だと思われます。
p.132のセリフ「こういう展開って漫画とかでよくあるでしょう?」は、この世界観で言わせたら、無意味に現実に引き戻されるだけのノイズ。
p.151「りーちゃんは変わらないですね」とp.152「一番変わってないのは、ゆーちゃんかもしれませんね」
この段階では偽装してないとダメなはずの二人がそんなこと言われて、普通に同調するという描写で落ち着かせたのには、読んでいて目を疑いました。p.148で「転校」というワードが出た瞬間に態度豹変させるぐらいの冒険がないと、この小説に「偽装」というルールをもうけた意味がありません。

結論。
ラブコメの断片断片はちゃんと面白いんです。センスが光ります。ただ、一発逆転を狙ったアイデアそのものがあだとなった気がしてなりません。
間違いなく好きな作品ですよ。キャラ同士のアンサンブルはもっと見ていたいと感じましたよ。だからお願いします。アイデアの枠だけ作って安心しないでください。ブラッシュアップしてください。


主観:(+)

オススメ度:C


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