読書感覚文
主観と感覚のままに書き殴ります。ネタバレは、未読の方が今後読んでも楽しめる範囲で
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俺の妹を世界一の魔砲神姫にする方法
俺の妹を世界一の魔砲神姫にする方法
第27回ファンタジア大賞<銀賞>



(あらすじ)
世界一の魔砲使いタケヒロは過度なシスコンだった。妹のナオが隠し事をしていることに気付いた彼は、友人の女子高生モリノを脅し、ストーキング行為に協力させる。ナオの想いを知ったタケヒロは、ナオの夢を叶えてやろうと尽力する。彼が目指すのは「まーるい世界」。

・ヒロインの魅力はある
・あらすじと本編の齟齬にびっくり
・あまりにも構成とテーマに難あり

ヒロインの新井場さんがかわいい。
弱みを握られて仕方なく協力させられる感じがgood!
秀でた能力を持った子が嫌々悪事に付き合わされるというシチュエーションは、なかなか面白かったです。そこからさらに転げ落ちていくともっと面白くなったんですが……。読んでいる最中は期待して楽しく読み進めることができました。

かなり問題の多い作品です。
もしかすると推敲の過程で誰かに余計なことを言われたのではないかと邪推するほど。

まず構成。
疑似三人称でころころ視点移動、時間移動がありすぎて読みづらい。
読みづらさを増強しているのが、空行にある「*」。たとえばp.173、時間移動も視点移動も場所移動もないのに空行「*」は混乱と苛立ちを招くだけでした。せめてちゃんと使い分けしてほしかった。

表現がくどい。
p.6「
(略)それも、何処かにスクリーンがあるわけではなく、空気しかない宙にである。

p.8「
(略)女子高生は肩の力がガクッと抜けた。
『あんたねぇ……』
 女子高生は呆れかえった。

p.198「
 奈緒美は座っていた。この街は坂が多く、一番上まであがると街中が見渡せる丘がある。奈緒美が座っていたのはそんな場所だった。

重複表現、まわりくどい言い回しは必ずしも悪ではありません(魅力を生むことだってたくさんあります)が、何度も続くと読みづらいだけです。

【隅付き括弧】の使い方について。
p.27で【奇跡】って出てきたときは、何かこの世界独自の用語なのかと思いました。【魔砲戦騎】【イグニゾン】【魔法使い】等と同じく。p.31でも【奇跡】と繰り返され、読む方としては「この【奇跡】なるものはいったい何のことを指しているのだろう?」と思いますよ。
しかし、p.92で妹の台詞内に出てくる「奇跡」には【隅付き括弧】がついていない。伏線かと思いましたよ。それがp.120で新井場さんの台詞で登場した「奇跡」にも【隅付き括弧】がついてない。しかも、物語上「奇跡」という単語が、我々が知っている「奇跡」という意味でしか使われない。
氷解するのがp.161。オグマちゃん視点の地の文「けれどまさかここで【それ】を見つけるとは思わなかった。」
強調したかっただけかーい!!
ルビで振る「、、」と同じ意図で使ってるだけなんですよね。作者さん。こんな二重の意図で使ったら混乱を招くだけだと思います。担当さん、ルビ振り機能のある『一太郎』を下書き段階で貸してあげてください。
しかもp.27で「奇跡」を強調するのって、そんなに意味がないんですよ。ラストの布石ということは百も承知です。が、ここで強調されても違和感の方が勝ってしまい、むしろノイズになると思います。

p.145の挿絵は困り眉毛で引きつった笑顔じゃないと駄目。
絵師さんにどんな指示を出してこうなったのか……。ここは間違いなく担当さんの責任。

テーマについて。
主人公タカヒロの監視行為は、善意でやったことだから許される(?)
こういう描き方って、タカヒロの唱える「まーるい世界」をものすごく不快に見せている気がしてなりません。
隠し事禁止! 嘘は絶対悪! みんながコミュニケーションを通してわかり合えば、平和への一歩!
なんだか押しつけがましく感じられるのです。
で、この「押しつけがましく感じられる」人種を否定している部分に、傲慢さを感じてしまうのです。
この主人公がp.179にて誇らしげに言う台詞。
「ああやって仲間と話しているうちに、いっしょに何かやっているうちに、みんなのことがよくわかってくる」(中略)
「そして最後に自分が何者だかわかってくる」(中略)
「ああいう一見くだらないように見えることをやっていく中で、やっと自分がわかるんじゃないかって。それで、次に、ようやく世界のことがわかるんだよ」
他者のことや世の中のことをわかった気になっている勘違い野郎の上から目線の説教を読まされている感じがして、かなり不愉快でした。
主人公を中途半端な未熟者に設定したことによる失敗です。
成長の余地を持たせたかったのはわかります。が、そのせいでキャラクターの説得力が失われたら元も子もないでしょう。
さらに、本質的には違うはずのテーマをいくつもあっちこっちに散らかしているせいで、何が言いたいのかわかりにくくなってしまっています。

ラストの迷シーン。
よくわからない空間でよくわからない人から妹ちゃんがお説教を受ける。お説教を受けたら奇跡が起きる。
一番大事なところにもってきているので、これがホントにやりたかったテーマなのでしょう。やりたかったのだと仮定します。
だったら!
主人公の自己実現であるとか、偏愛であるとか、個人的なテーマは別作品にとっておいて、
本作では、
こんな奴いねーよレベルの完璧超人でもいいからきちんと成熟した主人公を設定しておいて、
単純な勧善懲悪のプロットを軸にテーマを昇華させる方が、綺麗にまとまったんじゃないかと思います。
間違っても『兄が妹の生活を監視して何が悪い!?』『妹育成アクションコメディ』と帯つけて出すような作品ではありません。
もしその帯に拘りたいのであれば、
「クズ兄貴がちょっと成長して妹の気持ちを理解するようになる」という程度の軽い結末でオチのつくおバカコメディに振り切るべきだったと思います。

「妹愛」「妹の自己実現」「タカヒロの世直し」「タカヒロの成長」「居場所」「奇跡」「他者を思いやる心」
テーマを絞らずにぐっちゃぐちゃに混ぜ込んだ結果、「何が言いたいのかよくわからないけどなんか説教された」というマイナス感情しか残らない残念な出来でした。


主観:(-)

オススメ度:C


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